META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX,NOFOLLOW,NOARCHIVE" 脱「テレビ」宣言・大衆演劇への誘い 付録・映画「虹立つ丘」の《市松人形》
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2018-12-29

付録・映画「虹立つ丘」の《市松人形》

 ユーチューブで映画「虹立つ丘」(監督・大谷俊夫・1938年)を観た。舞台は竣工まもない箱根強羅ホテル、そこで働く兄妹の物語である。兄・弥太八(岸井明)はホテルのポーター、妹・ユリ(高峰秀子)は売店の売り子を勤めており、たいそう仲が良い。そこに療養にやってきた長谷川婦人(村瀬幸子)が、実は関東大震災で生き別れになったユリの母であった、という筋書きで、兄妹にとっては切ない幕切れとなったが、時折、兄が口ずさむ唱歌(「旅愁」「峠の我が家」)、妹・高峰秀子の初々しい絵姿(14歳?)も見られて、戦前(昭和13年)の風俗を感じるには恰好の作物であった。なかでも、箱根強羅ホテルの佇まいは、現代のホテルと大差ない。鉄筋コンクリート4階建て、大きな玄関を入ると広いロビー、売店に並んだ土産物、対面にはエレベーターという配置は、今でもお馴染みの風景だ。登山鉄道、周囲の山々、芦ノ湖の風情には「隔世の感」があるだけに、ホテルのモダンさが際立つのである。なるほど、全国に展開する温泉ホテルの原型はここにあったのか。また、その利用客は当時のセレブ層であることは確か、庶民は簡素な湯治宿に甘んじる他はなかっただろう。だとすれば、現代に生きる私たちは往時のセレブ層に等しい歓楽を味わっていることになる。幸せと言うべきか・・・。たしかに、私たちの生活は豊かになり、便利になったが、そのことによって失われたものもある。
 震災で孤児となったユリを兄として育ててきた弥田八、親との絆を求めて今でも大切に市松人形を飾るユリ、父母との邂逅そして兄との別れ、妹が残していった市松人形をしっかりと抱きしめる弥田八、そうした人物・場面に浮き彫りされる「無言の温もり」は、私たちの財産であった。薄汚れた、質素な市松人形こそが「人間の絆」であり、何よりも大切にされなければならない、と私は思う。(2017.1.6) 



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