META NAME="ROBOTS" CONTENT="NOINDEX,NOFOLLOW,NOARCHIVE" 脱「テレビ」宣言・大衆演劇への誘い 付録・邦画傑作選・「その夜の妻」(監督・小津安二郎・1930年)
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2018-12-13

付録・邦画傑作選・「その夜の妻」(監督・小津安二郎・1930年)

 ユーチューブで映画「その夜の妻」(監督・小津安二郎・1930年)を観た。登場人物は、深夜ビジネス街で拳銃強盗を働き警官から追われている橋爪(岡田時彦)、その妻まゆみ(八雲恵美子)、その子みち子(市村美津子)、橋爪を捕縛しに訪れた刑事(山本冬郷)、病臥するみち子を往診する医者(齋藤達雄)、その他大勢(橋爪を追いかける警官隊、強盗被害者)とシンプル、ほぼ5人の「絡み」だけで物語は展開する。時間も、ある日の午後9時から翌日の9時まで(原作は短編小説『九時から九時まで』・オスカー・シスゴール)という設定で、当時の人間模様がコンパクトに凝縮された佳品であった。
 橋爪は愛娘・みち子の治療代を捻出しようと借金に出かけたが誰も相手にしてくれない。やむなく強盗を余儀なくされたが、拳銃を所持しているところを見ると堅気とは思えない。いでたちもスーツにネクタイ、ハットとアメリカ風である。住まいは雑居ビルの一室、テーブル、椅子、ベッド、コーヒーポット、洗面器、アイスピック等々、家具・調度品の全てが洋風、壁にはローマ字のポスター、看板も見える。もしかして橋爪の職業はペンキ職人?、彼自身が呟いたように「俺たち貧乏人」であることは確かなようである。室内に干された洗濯物、床に並んだペンキ缶が哀れを誘う。 ベッドではみち子が目をさまして「お父ちゃんはどこ、お父ちゃんを呼んできて」と泣き叫ぶ。医者の話では今晩がヤマとのこと、途方に暮れるまゆみの姿がひときわ艶やかであった。追われ身の橋爪が帰宅、奪ってきた金をわしづかみにしてまゆみに手渡す。「あなた、もしかして・・・」と夫の顔を見据えれば、静かに拳銃を差し出し、「みち子の病気が治ったら、自首するつもりだ」。そこに訪れたのが円タクの運転手を装っていた刑事、「その筋の者だが、御主人は在宅か」。夫、現金、拳銃をあわてて物陰に隠し、「いいえ、主人はまだ帰っておりません」「では待たせてもらおう」「それは困ります。娘が大病なんです。お帰りください」「氷を割るくらいならやってあげるよ」などと言いながら机上に置き忘れた橋爪の帽子を取り上げてまゆみの頭に被せる。「実を言うとさっきあなたの夫をそこまで車に乗せてきたんだ」と言いつつ拳銃を取り出し「出てこい!」と叫んだ。まゆみも意を決したか、隠した拳銃を取り出して刑事の背中に押し突ける。「あなた!早く逃げて」。橋爪、姿を現したが泣き叫ぶみち子の枕元に駆け寄り「俺にはこの子を手放してゆく勇気はねえよ」「それなら私のことはかまわずに介抱してあげてください」なおも拳銃を突きつけて「今夜はこの子が生きるか死ぬかの一大事なんです。夫はこの子が峠を越したら自首すると言っています。それまではいつまでもこうしています」。刑事は静かに両手を挙げ、椅子に腰かけた。時刻は午前1時50分。橋爪の看病が続く。刻一刻と時間が過ぎ、時刻は3時・・・、睡魔がまゆみを襲う。夜が明け始め牛乳配達がやって来た頃、ふと気がつくと事態は逆転していた。拳銃を握っていたのは刑事、橋爪はみち子のそばで眠り込んでいる。慌てるまゆみに「静かに、子どもが目を覚ましてしまうよ。医者が来るまで待つから君も一休みしたまえ。袂の紙幣は僕が預かったよ」などと言う。万事休す、まゆみの力は脱けてしまった。やがて医者がやって来た。診察後、欣然として「もう大丈夫です!危険状態は脱しましたよ」。しかし、橋爪には妻子との別れが待っている。「別れのコーヒーでも入れてもらおうか」、まゆみがふとみると、待ちくたびれたか、刑事が居眠りをしている。咄嗟に「あなた、逃げて!」と夫を玄関口から送り出した。後ろを振り向くと、刑事が立っている。「僕が徹夜の疲れで眠ってしまったと思ったか、その通り、だからわざと逃したんじゃない」。刑事は「その夜」をこの親子たちと過ごすうちに、「拳銃も現金も取り戻した。もういいか」と許す気持ちになったのか・・・。少なくとも「俺はこの男を捕縛したくない」(できれば親子を救いたい)と思ったに違いない。静かに立ち去ろうとして玄関のドアを開けると、橋爪が立っていた。「逃げるなんて馬鹿な考えはやめた。刑期を務めれば思いっきりみち子を抱けるんだ」。わざと逃がしてくれた刑事に対するせめてもの恩義だろうか。呆然とするまゆみ、しかし気を取り直してみち子を抱き上げ、牽かれていく夫を見送る「その夜の妻」の姿はひときわ鮮やかであった。母として、妻として千々に乱れる女心を、女優・南雲恵美子はその表情・目線を通して見事に描出していた。さらに、二枚目・岡田時彦の「やくざ」な色気、ハリウッド映画出演経験者・山本冬郷の「いぶし銀」のような渋さ、モダンな背景・大道具・小道具も添えられて、たいそう魅力的な作品に仕上がっていた、と私は思う。お見事!と思わず心中で叫んでしまった。(2017.1.19)



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